【前編】アクトハウスの生徒さん有志の勉強会を取材!!
さて今日も、セブ島のアクトハウスの教室=現場からお送りします!
今回は、アクトハウス参加中の生徒さんが主催している『Design Night(デザイン・ナイト)』を取材。非常に有益なインタビューだったので、
①「コンセプトの話に特化した【前編】」
②「イベントの波及効果や今後を聞いた【後編】」
の二記事の構成にて、お送りしますね。
本来なら色々割愛や編集して、1つのインタビューにまとめるところですが、今回はお話の充実度から、削るのはもったいない情報量でした。ゆえに、ロングバージョンでお送りしまっす。
『デザイン・ナイト』というのがあると聞き…
このイベント『Design Night』は、とある生徒さんが自ら企画し、デザインに関するナレッジシェアリング(知識や情報の共有)を行う「アクトハウス内で実施されている定期(毎週日曜)の企画」。もちろん、アクトハウスの参加者のみに向けられた限定開催です。
※メンターも運営も全く関わってない「参加者自らの発案と声掛けだけで行われている勉強会」です。なので、その全貌は参加した生徒さんしか知りません。なので今回取材をお願いしました。
今回は、その主催者である生徒さんに「Design Nightとは?」「なぜこれをやろうと思った?現在の収穫は?」などなど、たくさんお聞きしました。 「前編」「後編」共に、どっちも深い話で、哲学的な面もあるかと思えば、シンプルな狙いもあったり、多方面にお話を聞くことができましたので、ぜひチェックしてみてください。
いろいろな深い発見があるはずです。深く造詣あるお話もとても勉強になるインタビューとなりました。ぜひ、読んでいただきたいお話です。
では、コンセプトからお聞きする「前編」から、さっそくいってみましょう!
『Design Night』の”ねらい”に迫るインタビュー
(参加者が作ってくれた告知フライヤー)
勉強の貴重な合間をぬって、このイベントの主催者さん=アクトハウス参加中の生徒さんにたくさんお聞きしました。
単なる集まりなどではなく、本当に深い理由がしきつめられた、とても考えられたイベントであるその理由=ねらいを「前編・後編」に分け、じっくりご覧ください。では、「コンセプトの話に特化した前編」からどうぞ!
まず『Design Night』とは何だ…?
■質問「では、今日はどうぞよろしくお願いします!さっそくですが『Design Night』とはいったい何でしょう…?」
「Design Nightとは、デザインに関する学びを参加者同士が共有するイベントですね。毎週日曜の夕方に生徒主体で開催しています。各々が最近いいなと思ったWebサイトを紹介しあったり、その週学んだ知識や実際につくったものをシェアしたりする時間です」
■質問「なるほど。だから”ナイト”だったんですね。情報やスキルをシェアする場としての」
「そうですね。一人5~10分程度の短い発表と、それに対する感想や知見の共有が主な内容で。発表は自主性を大切にしていて、やりたい人が話したいテーマで発表します。発表を聞くだけの参加もWelcomeな場なんですよ」
〜過去の発表内容の一部〜
例えば過去の、各人の発表内容や持ち寄り企画はこんなものも。(楽しく勉強できそう)
☑Google フォントをクイズ形式で一挙紹介!!!
☑イラレの機能紹介!
☑意外とCSSだけでできる装飾5選
『Design Night』に込めた「3つのねらい」とは?
(Design Nightの様子。生徒同士での貴重なスキルシェアが生まれている)
ひとくちに「デザインの勉強会」と言っても、コンセプトや告知、企画も整理されていないとなかなか周囲には伝わりにくく、また同時に準備も大変かもしれません。当日はファシリテーション(イベントやミーティングを円滑に進める進行・調整役)も必要です。
ご自身も半年コースの後半3.5ヶ月の「フリーランス100日実践」のさなか、そこまでして実現したかったウィークリーの企画の「ねらい」をお聞きしました。
1. インプット量の不足を補う
■質問「なぜ、このような勉強会をやろうと思ったのでしょうか?」
「Design Nightを企画した理由は3つあります、ちょっとご説明しますね」
■質問「よろしくお願いします…!」
「1つ目の理由は、私自身が実践期間に入り、デザインを考える際にアイデアがあまり湧いてこなかったからです」
■質問「なるほど…」
「その原因は、自分自身のインプット量が不足していたからだと考えていました。『アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない (an idea is nothing more nor less than a new combination of old elements) 』。これは『アイデアのつくり方(A Technique for Producing Ideas』という本の一節です」
■質問「どなたの本なのですか?」
「著者はジェームズ・ウェブ・ヤング(1886−1973)という、当時アメリカ最大の広告代理店トムプソン社で広告制作に手腕を振るった広告マンですね。また、画家でありながら、脳科学者でもある塚田稔によると『脳内に形成される外界の世界(再現的世界)と脳内に情報を創発させる情報創成の世界が干渉し合うことで、新たな創造の世界が生み出される』そうです」
■質問「深いルーツですね」
「たとえば、英語学習では『たくさん英語に触れれば話せるようになる』という考え方がよく知られていますよね。つまり、英語に多く接することで脳が英語に慣れ、自分で語彙表現を自由に紡いで話せるようになると捉えられているようなんです」
■質問「たしかに、よく聞く話かも」
「この考えは、第二言語習得理論の一つである『イマージョンラーニング』にも見られます。ちなみに『イマージョン(immersion)』は”浸かること”や”没入”を意味します。実際、海外で働く知人の一人は、単語をある程度覚えた後に当時ハマっていたハリーポッターシリーズの映画を数千回も視聴するほど徹底的に英語に触れていたそうで。また、毎日学んだ表現や文法事項を日記に応用することで、英語に習熟してきたそうです」
■質問「それは、ちょっと初耳でした」
「また、最近の神経科学の研究では、記憶は「脳内の多数の神経細胞が複雑に結びついたネットワーク内で形成される』と考えられています。神経細胞同士が情報を伝え合う結合部のシナプスは、その使用頻度や強度に応じて働きが変化し、頻繁に使われると記憶が強固になり、逆にあまり使われないと記憶が薄れていく仕組みがあるそうです。ちなみに、この性質は『シナプス可塑性(synapse plasticity)』と呼ばれることをアクトハウスに来て、英語の授業で初めて知りました」
■質問「なんと英語の講座から!」
「ですね(笑)このように、豊富なインプットが記憶や創造性に大きく影響することを踏まえると、デザインにおいても新しいアイデアを生み出すためには、先人の知見を十分に学ぶことやそれらの知識を応用して実際に形をつくることが不可欠だと考えました。これが、Design Nightを企画した理由の一つです。」
2. 他者と学び合う
■質問「2つ目の理由は…?」
「2つ目は、私自身が “一人で学習するより他者と学習するほうが様々な気づきが起こりやすく、学習の継続や習慣化が容易だ”と考えていたからですね」
■質問「そういった研究なんかもありそうですね」
「ですね。例えば、東京大学名誉教授の吉見俊哉氏は『知的創造の条件──AI的思考を超えるヒント』の中で『知的創造というのは決して自分、つまり私の頭の中にあるアイディアを外へ表出していく行為ではありません。そうではなく、それは根本的に対話的な行為だと思っています。つまり、他者との対話、コミュニケーションの中から生じるものなのです。』と述べていました」
■質問「それは興味深いところ」
「『自分が話した”ことば”(内容)を自分で聞くことによって、自分が考えていたことに気づく』現象は、”オートクライン効果”と呼ばれ、特に双方向コミュニケーションを重視するコーチングの分野でよく知られています。さらに、学習科学、とりわけ学習環境デザイン分野で著名な教育工学者でありながら、日本科学未来館副館長や日本学術会議会員などを歴任してきた美馬のゆり教授の言葉に『コミュニケーションのあるところに学びは生じる。コミュニケーションのないところに問題は生じる。』というものがあるんですよ」
■質問「深いですね、いろいろな視点からこのDesign Nightの企画が形成されていったと」
「私自身高校までは、学びを『教師から与えられる固有の知識を記憶すること(問題を解く方法も一つの知識)』だと捉えていました。しかし、大学入学以後、複数の環境を越境してそれぞれの環境で多様な人々の異なる意見や視点に触れてきたことで、学ぶという行為に対する見方が変容しました」
■質問「環境がポイントですね」
「誰しも、環境によって自分の振る舞いや言葉遣いが変化した経験があるのではないでしょうか?心理学からデザインの分野に応用された概念の一つに『アフォーダンス』というものがあります。アフォーダンスとは『環境が動物に提供するもの』のこと。affordという英単語は、誰かに何かを与えることを意味します。提唱者である生態心理学者のギブソンは、アフォーダンスを『身の周りに潜む”意味”であり行為の”資源”となるもの』と説明しています」
■質問「アフォーダンス…」
「例えば、地面は立つことを”アフォード”し、水は泳ぐことや飲むことを”アフォード”するといった感じです。何言ってんだという感じですが『環境によって人間の行為や思考が変化するのは、その環境ごとに内在されている意味や意図があるから』と言い換えることもできるのではないでしょうか」
■質問「ですね。環境が人に与える大きさ、というのも聞いたことあります」
「この概念を踏まえた上で現在は『学ぶとは、他者や環境から情報や意味を受け取り、それらを自分の中で過去の思考と結びつけ、外界から求められた形(問いなど)に応じて形創られたアイデアを表現すること』だと捉えています。物事を見つめる視点によって一つの環境でも様々な気づきや学びが得られますし、アウトプットの表現方法も文章化にとどまらずプレゼンや場づくり、グラフィックデザインやプログラミング、作詞作曲などたくさんあると思います」
■質問「デザインだけにはとどまらない考え方ですね」
「この学習観に基づくと、他者がいるからこそ学びが生まれるし、特定の学びに適した環境、例えばデザインに関して学びやすい環境というのも存在すると仮説を立てることができます。自分の視点だけでは得られなかった学びを、他者の発表から気づき得て、自分の既知の言葉でそれを理解し、次なる案件や制作などのアウトプットにつなげる。そのような学びができる場をつくりたいと考えたことがDesign Nightを企画した理由の2つ目ですね」
3. 発表する機会を増やす
■質問「3つ目の理由は?」
「アクトハウスの実践期間には、デザインを発表する機会が複数ありますよね。どういうテーマでWebサイトをつくるか、どういう順番で情報を配置するか、どういうデザインにするかなどをプレゼン形式で発表する。しかし、授業内だと時間に限りがあるので、より発表機会を増やし、自分の考えや意図を他者へ伝えるスキルを向上させたかったというのが3つ目の理由です」
■質問「アウトプットの機会の創出…!!」
「そうですね。構成主義(constructivism)という『知るということは自分の中に意味を構成すること』と考える立場に立つと、知識や学習を次のように捉えることができます。①②③で分けて説明すると…」
〜構成主義における「知識と学習」〜
①学習とは学習者自身が知識を構築していく過程である。知識とは誰かによってつくりあげられたものを身につけていくのではなく、自分が学習活動に参加する中で、自分自身で点検しながら身につけていくもの。体験と切り離すことはできない。
②知識は状況に依存している。知識は細分化され、構造化されてパッケージになっているのではなく、必要とされる場面から切り離すことができない。
③「学習は共同体の中で相互作用を通じて行われる。学習は一人ひとりが個別に隔離された状態で行うものではなく、常に他の学習者との関わりあいの中で行われる共同体的な営みである。」( 学習心理学の3大潮流(3)構成主義:正統的周辺参加と足場づくり より引用。)
「①と②の捉え方をするなら、人前で発表する・他者へアイデアを伝えるスキルは、リアルな人間の前で話す経験を重ねることでしか身につかないと言えます。メンタルリハーサルという、スポーツや芸事の習得や技能の向上をはかる手段として、実際の練習とは別に頭の中でリアルに練習を想像することを繰り返す方法などもありますが、実際にやる方が効果は高いと思います。」
■質問「たしかに…」
「まとめると…『自分のデザインに関する知見を深めるために他者と学ぶ必要があり、相手にアイデアを伝える技能を向上させるためにプレゼン形式の発表を取り入れた』というのが、Design Nightを企画した理由になりますね」
発表せず聞くだけでもOK。みんなで成長できる機会創出へ。
■質問「ちなみに、Design Nightの参加において『聞くだけでもOKだよ』という呼びかけは、ハードルをさげようというところからですか?」
「はい、もちろん単純に参加ハードルを下げるという意味もありつつ『聞き手という存在も大切だ』と考えているからなんです。演劇や映画、絵画などは見る人がいて初めて成り立ちます。学ぶという行為、伝えるという行為にも他者の存在は必須と思うからですね」
■質問「深い…!!」
「後編」へ続く!『Design Night』をさらに深堀る!
お察しのとおり、この企画者さん、只者ではなかった…。(普段も普通に雑談しているだけで相当楽しい人)
単なるインタビューという枠を超えて、この『Design Night』のおかげで、こんないろいろなお話が聞けるとは…。
ということで、さらにすごいことになる続編「イベントの波及効果や今後を聞いた【後編】」へと続きます。
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(インタビュー:アクトハウス編集部)
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